新年ですね。2025年が実りある年にしたいものです。年の初めは何かと感慨深くおごそかな気持ちに自然となります。
本もそうですね。新年の初めは良い本で幕を開けたいものです。今回はそんな、新年にふさわしい「ハズレなし!」な本を5つ紹介いたします。
住野よる『君の膵臓を食べたい』双葉社
- 異色のコンビ!?対極にいる高校生同士の言葉のキャッチボール
- 人生の時間の使い方について考えさせられる
- 生き方が変わる1冊
異色のコンビ!?対極にいる高校生同士の言葉のキャッチボール
人に関わるのが苦手でクラスで孤立している「僕」と、超ポジティブでクラスの人気者である桜良。一見、真逆の性格の2人が共有しているある“秘密”がある。
それは桜良が大病を患っていて余命1年だということ。ある日偶然その事実を知ってしまった「僕」はクラスでただ一人、彼女の秘密を知るクラスメイトとして桜良と接していくことになる。
この小説の見どころはセリフ。「僕」と桜良の対話。はじめはたどたどしい二人の距離が徐々に縮まっていき……。そんな二人の心情の変化がセリフを通して読み取れます。
源氏物語などにみられる、恋しい人に贈る和歌のやりとりのような奥ゆかしささえ感じられる
人生の時間の使い方について考えさせられる。
余命1年というなかで今を懸命に生きている桜良。自分の人生のタイムリミットがわかっていたとしたら、それがあとわずかだとしたら……。そう考えると私たちはどのような心持になるでしょうか。私はきっと死への不安と焦りに押しつぶされるような気持ちになると思います。
人生の生き方が変わる
そんな気持ちで『君の膵臓を食べたい』を読むと、桜良の前向きで、ひたむきな生き方に胸を打たれます。そして自らの生き方について考えさせられます。時間は有限であり平等です。未来のために目標をもって生きることも大切ですが、一度立ち止まって、「今」の自分を大切に生きよう、とも思わされます。
暁佳奈『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』京都アニメーション
本書の本編は「上巻」「下巻」に分かれております。上記のリンクでは
「上巻」が表示されます。お買い間違いやまとめ買いでのお買い忘れにご注意ください。
- 郵便社に務めるヴァイオレットと人々との出会いの物語
- ヴァイオレットの苦悩と心の成長の物語
- 生きるのが辛い人にこそ読んでほしい1冊
郵便社に務めるヴァイオレットと人々との出会いの物語
2018年にアニメが放送され、2020年には映画化されたことで名前だけでも知っている方が多いかもしれません。
手紙を代筆し届ける、自動手記人形という仕事をしている少女ヴァイオレット。彼女が仕事で行く先々での人々との関わりを描いた作品です。妻と娘を病で亡くした劇作家、余命わずかな母とその娘、戦争で夢を絶たれた青年……。様々な人々が登場しますが、共通するのが「手紙を届けたい」という心です。
想いを文字にすることで、はじめて見えてくるものがあるよね!
ヴァイオレットの苦悩と心の成長の物語
仕事ができ、評判の良いヴァイオレット。苦しみ悩む人々にそっと優しい言葉をかける彼女。そんな彼女が時折のぞかせる悲しげな表情。その原因は何なのか?『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』では主人公ヴァイオレットの過去、そこからの苦悩と心の成長を追っていきます。
生きるのが辛い人にこそ読んでほしい1冊
読んでいて時に辛く悲しく、時にあたたかい。そんな『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』が私たちに伝えたいものとは何か?著者の暁さんは次のように語ります。
(前略)他人の人生です。何が正しいなんて、言い切れることは1つもありません。じゃあ、何が正しかったんだ。彼女を通して、何が言いたかったんだと問われると、ただ、応援していますというだけなんです。(中略)少しだけ、自分以外の誰かに優しくありたい。しぬまでにもうちょっと、もう少し、良いものに。それがすごく、大事なことなのではないかなと思っている日々です。だから、応援しています。
暁佳奈『ヴァイオレット・エヴァーガーデン(下)』京都アニメーション あとがき より
誰かに優しくすることってなかなかできないこともあります。自分が立っているだけで精一杯のような日々。そんな日々の中にも優しさを見つけることができる。自分が弱くたって誰かの支えになることはできる。悲しみを抱えながら不器用に、それでも生きるヴァイオレットからは、そんな生きる希望を、生きることの大切さを学ばせてもらえます。
吉野源三郎『君たちはどう生きるか』岩波書店
- 戦争を生き、平和を訴え続けた著者が発する問い
- 中学生のコペル君と叔父さんとの対話が深い!
- 生きる目的を問う
戦争を生き、平和を訴え続けた著者が発する問い
著者である吉野源三郎氏(1899-1981)は大学で哲学を学び、卒業後は陸軍に入隊。その後は治安維持法の「目的遂行罪」で逮捕、有罪判決で陸軍刑務所へ送られるという経験もしています。
吉野氏は一言でいえば、「平和を追い求めた人」です。人とはどうあるべきか、社会とはどうあるべきかを問い続けた人です。本書のタイトル『君たちはどう生きるか』は吉野氏が私たちに問う、まさに永遠のテーマである、といえるでしょう。
中学生のコペル君と叔父さんとの対話が深い!
『君たちはどう生きるか』の主人公のコペル君。「コペル君」というのはいわばニックネームで、本名は本田潤一君といいます。なぜ本田君がコペル君となったかは本書の中で明かされます。
コペル君はなかなか洞察力のある子です。例えば彼はある日、ビルの屋上から見る人々がまるで理科でならった水の分子のようだ、と感じ、小さな人々がまるで世の中の波に流されるように生きている、と思いを巡らせます。
そしてコペル君は自分の思ったことを近くに住む叔父さんにぶつけます。ここでの叔父さんの返答がまた深く、読みこたえがあります。
生きる目的を問う
本書を通して私たちが「生きる目的」を問われているように感じます。私たちは何のために生きているのでしょうか。それは楽しみのためか、正義のためか、はたまたお金のためか。
正しいことをして生きたい。多くの人がそう思うことでしょう。しかし、この「正しい」生き方とはどのような生き方でしょうか?これには答えがありません。
『君たちはどう生きるか』では叔父さんが鋭い洞察をしています。つまり多くの人が周りから正しく、偉く“みえる”ような生き方をしている。しかしながら、本当の“正しさ”とは誰かからすぐに認識されないところ、誰かから見えないようなところにあるのかもしれません。
本書では人々の様々な“価値観”を垣間見ることができます。
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